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エメラルドの鎮魂歌
第10章 エメラルドの鎮魂歌 〜二つの月〜
…その夜、瑞葉は夢を見た。

八雲に激しく抱かれている夢である。
夢の中で、八雲は甘く濃密に瑞葉の身体を愛していた。
…懐かしい男の愛撫…。
溺れてしまいたい気持ちを押し殺す。

「…八雲…八雲…やめて…お願い…。
だって…八雲は…僕のお父様なんでしょう…」
泣きながら抗う瑞葉に、八雲はその深い瑠璃色の瞳に淫蕩な色を浮かべ、冷たく笑った。

「…だからですよ…。瑞葉様…。
私は、貴方を我が子だから犯すのです。
貴方を愛してなどいない。
最初から、愛などではなかった。
…貴方と…千賀子様と…薫子様に復讐するために…。
ただそれだけの為に貴方を抱いたのですよ…!」
高らかな笑い声と共に、熱い楔が容赦なく打ち込まれる。
張り裂けそうな哀しみが全身を襲い、瑞葉は泣き叫んだ。

「嫌…嫌…嫌ッ!」

泣きながらもがく。
もがいて、必死で逃げ出す。
目の前に広がるのは…荒涼とした底知れぬ闇ばかりだ。
「…だれか…だれか…たすけ…て…」


…必死で伸ばした手が、温かく力強い手に引き上げられた。
「瑞葉!瑞葉!どうした?大丈夫か?」

…涙で揺らめく視野の中に映ったのは、心配そうに覗き込む藍の姿であった。




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