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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
晩餐会は和やかに進んだ。
和葉の明るく楽しい話術は、その場の空気を和ませた。
瑞葉は初めてと言ってもいい、家族と共に…また、大勢の人々に見つめられる中での食事であったが、落ち着いた品位に満ちたテーブルマナーで、食事を進めていた。
その様は、征一郎や千賀子は勿論のこと、薫子をも驚かせた。
幽閉し、家庭教師は雇っているとはいえ、正式なテーブルマナーまで習得しているとは思いもよらなかったからである。
恐らくは八雲がそれらを教えていったのだろうと推察し、薫子は一層瑞葉に冷酷な眼差しを当てた。
和葉への誕生日の贈り物は眼を見張るような豪華なものばかりであった。
薫子からは、白馬の駿馬が一頭…馬術が得意な和葉のためだが、目の中に入れても痛くはないほどに和葉を溺愛している様子が伺えた。
両親からは、舶来品の万年筆と腕時計だ。
…瑞葉への毎年の誕生日プレゼントは、密かに千賀子が贈る衣服や身の回り品…そして、千賀子の実家の援助品と…とても実用的なものばかりだ。
だが、瑞葉は自分と比べることもなく、穏やかな笑顔でそれらを楽しげに見つめていた。
そして自分の番が来ると少しはにかみながら、綺麗に包装された小さな箱を手渡した。
「…和葉が気に入るか分からないけれど…」
そう前置きをした。
リボンを解き箱を開け、和葉は歓声を上げた。
「わあ…!手袋だ!僕、丁度欲しかったんだよ。
凄く素敵な色だね。ありがとう!兄様」
贈り物は上質なカーフの乗馬用手袋であった。
焦げ茶色の上品なデザインは恐らくはイタリア製のものだろう。
「八雲が買いに行ってくれたんだ。
…僕はどんなものが良いか分からないから…八雲のセンスに任せたんだ」
嵌めてみるとサイズもぴったりであった。
和葉は瑞葉の背後にすらりと佇む美しい執事を見上げた。
「…ありがとう、八雲」
八雲は、僅かにその深い瑠璃色の瞳に微笑みの色を浮かべた。
…それは、思わず泣きたくなるような温かみを感じさせる微笑みであった。
和葉が初めて、八雲に微笑みかけられた瞬間であった。
和葉の明るく楽しい話術は、その場の空気を和ませた。
瑞葉は初めてと言ってもいい、家族と共に…また、大勢の人々に見つめられる中での食事であったが、落ち着いた品位に満ちたテーブルマナーで、食事を進めていた。
その様は、征一郎や千賀子は勿論のこと、薫子をも驚かせた。
幽閉し、家庭教師は雇っているとはいえ、正式なテーブルマナーまで習得しているとは思いもよらなかったからである。
恐らくは八雲がそれらを教えていったのだろうと推察し、薫子は一層瑞葉に冷酷な眼差しを当てた。
和葉への誕生日の贈り物は眼を見張るような豪華なものばかりであった。
薫子からは、白馬の駿馬が一頭…馬術が得意な和葉のためだが、目の中に入れても痛くはないほどに和葉を溺愛している様子が伺えた。
両親からは、舶来品の万年筆と腕時計だ。
…瑞葉への毎年の誕生日プレゼントは、密かに千賀子が贈る衣服や身の回り品…そして、千賀子の実家の援助品と…とても実用的なものばかりだ。
だが、瑞葉は自分と比べることもなく、穏やかな笑顔でそれらを楽しげに見つめていた。
そして自分の番が来ると少しはにかみながら、綺麗に包装された小さな箱を手渡した。
「…和葉が気に入るか分からないけれど…」
そう前置きをした。
リボンを解き箱を開け、和葉は歓声を上げた。
「わあ…!手袋だ!僕、丁度欲しかったんだよ。
凄く素敵な色だね。ありがとう!兄様」
贈り物は上質なカーフの乗馬用手袋であった。
焦げ茶色の上品なデザインは恐らくはイタリア製のものだろう。
「八雲が買いに行ってくれたんだ。
…僕はどんなものが良いか分からないから…八雲のセンスに任せたんだ」
嵌めてみるとサイズもぴったりであった。
和葉は瑞葉の背後にすらりと佇む美しい執事を見上げた。
「…ありがとう、八雲」
八雲は、僅かにその深い瑠璃色の瞳に微笑みの色を浮かべた。
…それは、思わず泣きたくなるような温かみを感じさせる微笑みであった。
和葉が初めて、八雲に微笑みかけられた瞬間であった。