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秘めた花は彼の腕の中で咲く
第9章 始めて見た時は、君しか見えてなかった…
「舞花、借金って?」
「…何でもない」
「そんな訳無いでしょ?夜仕事をしてるって…」
「何でもないって」
肩に手を置かれた瞬間、反射的にそれを振り払ってしまった。
初めて示してしまった姉への拒絶…
周りの喧騒が聞こえなくなり、3人の空間が切り離されたような気がした。
「舞花…」
「ま…佐々木さん」
震える手で何とか1万円札を置くと、姉に背を向けて喫茶店から飛び出した。
後ろから姉と繁正さんの声が重なって聞こえたが、振り向かずに早足で逃げた。
ーーーーーーー
人混みに紛れて2人を振り切り、出入り口の歩道橋から道路を見下ろす。
「はぁ…」
これからどうしようかな…?
さっきの話をどこから聞いていたか分からないけど、全部聞かれてたらお姉ちゃんも傷付いてるかな…
連絡して先に帰ろうかと思ったが、駅からは距離があるし、バスだって今走って行くのが見えたから、すぐには来ないだろうし…