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秘めた花は彼の腕の中で咲く
第11章 君に危害が及ぶ前に身体が勝手に動いてたんだ…
よく見ると、服のどこにも血が付いていない。
繁正さんの身体を触って確かめるも、刺し傷が一切無い。
でも、繁正さんの手の平は真っ赤。
「ど、どうなって…」
「刺される寸前に刃の部分を握ったんだ。代わりに手が切れちゃったけどね」
右の手の平がパックリと割れ、そこから血が溢れて床に滴り落ちる。
ハンカチを取り出して、傷を覆うようにキツく巻き付け、ナプキンを握らせた。
「本当に良かった…刺されたと思っちゃった…」
「死なずに済んで良かったよ」
「はい…」
泣きそうになるのをグッと堪えていると、繁正さんが小声で話しかけてきた。
「心配してくれるのは嬉しいけど…」
「はい?」
「素のままで騒ぐと他のお客さんに正体がバレちゃうよ?」
「……」
もう!手が切れてるのに、どうしてこの人冷静なの!?
けど、繁正さんの指摘通り、常連さんが居る手前で女性を出すのはマズイ。
文句を言ってやりたいけど、思った事をぶちまけてしまいそうで、口を真一文字に結んだ。
「凄い顔になってる」
「言いたい事我慢してるんですから、黙っといて下さい」
「はいはい」