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秘めた花は彼の腕の中で咲く
第16章 手を伸ばしても届かない存在
電話越しに聞こえる伯父の声がいつもとは違い、慌てているように感じる。
車のエンジン音が聞こえ、発進しだしたが電話を切る様子がない。
「どうしたの?運転しながら電話は危ないよ」
『今から舞花の家に行く。その間家から一歩も出るな』
「えっ!?もう7時半だけど、一体どうしたの?」
『それは…』
ピンポーン…
「ごめんなさい。誰か来たみたい」
『待て舞花…外に出るな。来客でもチェーンをして対応しろ。あと電話は切るな』
どうして慌てているのか深く理解せず、チェーンを掛けずに扉を開くと、スーツ姿の男性が立っていた。
…誰だろ?
「あの…」
「夜分遅くにすみません。佐々木 舞花さんのご自宅でよろしいですか?」
「は、はい…あっ!?」
返事をした直後、身体に強い痛みが走り、その場に蹲った。
男性の顔を見上げると、無表情で私を見下ろしていた。
この状況はマズいと判断し、目の前に落ちたスマホを掴もうとすると、男性が先に掴んで伯父との通話を切られてしまった。
呼吸をする度にお腹を中心に痛みが強くなり、意識が遠ざかっていく。
「はぁ、はぁ…」
「おい、早くしろ。他のやつに気付かれる前に運び出せ」