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秘めた花は彼の腕の中で咲く
第16章 手を伸ばしても届かない存在
バンッと乱暴に窓ガラスを叩き、外から誰かが怒鳴った。
「おい開けろ!彼女を解放しろ!」
「くそっ!やっぱり警察か!付けてやがったのか……相手は1人か…だったら…」
スーツ姿の男は鞄に手を伸ばして、黒い塊を手に取った。
先端から電気が発生するのを見ると、スタンガンなのだろう…
男が退いた今こそ逃げるチャンスなのに、睡眠薬が効いてきたのか段々と身体が重くなってきた…
「分かった!開けるからちょっと離れてくれ!」
男は外の人物にそう声を掛け、慎重にドアを開けて外に出た。
「あっ、お前!このヤローよくも!!…いでっ!!」
しばらくすると後部座席に人が乗り込んできた。
どうにか気力を振り絞り、身体を起こして後退りした。
「嫌っ、こ、来ないで…」
「……いか、舞花!!大丈夫か!」
「…し、しげ、まささ…」
顔を上げると、目の前にもう2度と会う事が無いと思っていた彼が私を抱き締めてくれた。
「ど、して、ここ…に」
「マンションに着いたら、舞花が誘拐されてる所に遭遇して、車で追い掛けてたんだ。良かった…無事で…」