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弥輿(みこし)
第2章 久遠村
「良く来た、如月愛海さん」
「あ、え?
あのーー??」
出迎えに出て来たのは40過ぎだろうか? 和服姿の渋い感じの男性。
黒色の少し短めのサラサラヘアー、目はキツそうだけど年齢を考えたら整った顔立ち、うんん年齢を重ねたからこその深みのある顔立ちと言った方が良いの?
そして、どことなく亡くなった母に似ているとも思う。
「此は失礼、私は宗方隼(ムナカタ ハヤト)
此の宗方家の現当主であり、久遠村の村長もやっている」
「あっ!
如月愛海です、日帰りで帰るつもりだったのに陸さんが此方に泊まれと……」
「ああ私が佐伯に話をした
愛海さんの母、聖海(サトミ)さんの話を聞きたいと思ったから此処に呼んだ」
「私の母……ですか……」
この人……じゃなくて、村長さん? は母の事を知ってる、だって簡単に母の名前を聖海って間違えなく言ったもの。
聖なる海と書いて聖海(サトミ)、普通は簡単に読めない名前なのに、きっぱりと"聖海さん"と言った。
「玄関で立ち話も無粋、どうぞ上がって寛いで欲しい」
「は……はい……」
私は何故この時に毅然と断らなかったのだろうか?
私の知らない母の話に惹かれたと言えば惹かれたとは思う。
でも断らなかったが為に、此から久遠村の、宗方家の思惑に乗せられる事にもなってしまった。
そう、村長さんは初めから母の話という魅惑的な餌で私を釣ったのよ、私に分からないように周到な言い回しで。
「如月さん俺は帰るからごゆっくり」
「えぇ!
陸さんも一緒じゃないんですか!?」
「やっぱりさ、身内話に立ち入るのは悪いかなって……
明日の朝に迎えに来るから」
「そ、そう……」
てっきり一緒だと思った陸さんは、玄関先だけで本当に帰ってしまい、選択肢の無い私は村長さんに連れられるがままに屋敷の奥へと通された。