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弥輿(みこし)
第3章 宗方宗家
入った部屋は和モダン風、畳なのに絨毯が敷いてありソファーセットもある、それに回りの調度品も高そうな物ばかり。
幾ら形ある物は何時かは壊れると言われても、はいそうですかと触る気にもなれなそう。
その中で私は2~3人掛けのソファーの端っこに座り、村長さんはその向かい側の2掛けのソファーに腰を下ろした。
「先ずは聖海さんの事
彼女は宗方の分家の1つに産まれ、そして村の外の男と駆け落ちをした
此方としても八方手を尽くして探したが見付かる事も無く……もう30年になるのか……」
「30年前は母が父と結婚した年、でもその5年後に母は離婚しています、そして私は父の事は殆ど知りません」
「失礼だが聖海さんは?」
「7年前に亡くなりました」
「そうだったのか、離婚したのならば久遠村に戻って来れば良かったものを……
久遠村いや宗方だったら、何不自由無く暮らせたと言うのに」
父と駆け落ち婚だって初めて知った、でもそれまでして結婚したのに5年で離婚したのは何故?
それに……
「久遠村の事は子供の頃に母から少しだけ聞きました、でも母は頑なに久遠村を避けていたと思います」
「避けるか、それには久遠村の風習があるのかも知れん、特に宗方家に産まれた女子は久遠村の男と一緒になるのが風習、宗方は女性出生率が低い為の子孫繁栄という意味もある」
「じゃあ母は風習を破って駆け落ちしたという事ですか!?」
今時そんな風習があるなんて信じられない!
結婚自由の世代だよ?
それなのに宗方に産まれたというだけで、久遠村の男性と強制的に結婚させられるなんて時代錯誤もいいところ、母が何故久遠村に近付かなかったのか少し分かった気がする、久遠村の男性と再婚させられるから、だから頑なに拒む方を選んだんだ。
「そうとも言えるが、聖海さんは宗方直系及び分家では只1人の女性だった
宗方は久遠村を護らねばならぬ、即ちその役目を棄てたとも言う」
「風習だから役目だから、そんなのは間違っていると思います!」
「愛海さんは外から来たからそう言える、だが内に居ると久遠村を護る者は必要なのだ、漁業しか特産の無い久遠村を護るのが宗方の逃れられない運命」