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弥輿(みこし)
第1章 偶然的運命の出会い
◇◇◇
「ええ……はい、確かに旧姓が宗方と言いました、20代中間くらいの女性です」
如月さんが帰った後、俺もあのbarから出て、目的の人物に電話を掛ける。
話を聞いたのに知らないでは通らない特に久遠村では、如月さんには悪いとは思うけど、俺だって如月さんとの話の間必死だったんだ!
『そうか宗方と……
漸く見付けた、その娘でも構わない久遠村に……私の屋敷まで連れて来られるか佐伯?』
「口約束ですが、久遠村に遊びに行くという約束は取り付けました」
『何としても連れて来るのだ!
そうだな……見返りはお前が持ちたがっていた船を、私の名で考えてやろう』
「……船……」
船を持つのは俺の夢
まだ下っ端の俺じゃ、中々叶わない夢だと思っていた。
でも如月さんを、あの屋敷に連れて行く事が出来れば、俺は念願の船を持つ事が出来る。
こんなチャンスなんて滅多に無い、如月さんをあの人……宗方の屋敷に連れて……行くんだ、騙す事になっても。
『この村には宿が無い、泊まる場所とでも言えば良い事、出来るな佐伯?』
「……はい村長……」
『長く待った宗方の血、そして条件に当てはまれば尚更上々、決して逃がすな久遠村の為に』
「分かりました必ず」
スマホを切って軽い溜め息。
本当はこんな事はしてはいけない、分かってる、分かってるんだ!
でも、でも!!
久遠村の為……いや俺の為に、如月さんを村長に差し出す。
存在を知ってしまった俺は、こうしか出来ないんだ。
もし村長を裏切れば久遠村どころか、この世の中に俺の居場所が無くなってしまう。
仕方が無い、それが久遠村で生活する者のルール、宗方には逆らわない、嘘偽りなく従う。
俺は……俺達は、久遠村でずっとそうしてやって来た。
「ごめん如月さん」
謝って許して貰えるとは思わない、それでも俺は如月さんを騙す。
それしか俺の道は無いから許してくれ。