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弥輿(みこし)
第1章 偶然的運命の出会い
「知ってるの久遠村?」
「あ……えーと……その……」
言って良いのかなこれ?
母がずっと嫌煙していた場所だよ、苦しくても頼らなかった場所だよ、今更だって分かっているけれど、私が言って良いのか躊躇いが生じてしまう。
「如月さん?」
「……愛海?」
困った私に、陸さんとまさかのマスターの追い討ち、だから私は小さい声ながらも口を開いてしまう。
「……知って……ます……
話に聞いただけだけど……
久遠村は亡くなった母の出身地なので……」
「お母さんが久遠村出身!?
でも久遠村で如月という名字は居ないよ?」
「如月は父の方の名字で、母の旧姓は確か……宗方とか言ったかな??」
「……宗方……」
えっ? 私変な事を言った??
今度は陸さんが私を見詰めて、考えるようにボーッとしている。
間違ってはいないと思うけど、もう7年も前の話なんで記憶が少し曖昧なのも確か。
「あの……陸さん?」
「あ……いやゴメン、いきなり同郷と分かって少しビックリしただけ
でもお母さんとは言え同じ久遠村って嬉しいな」
「一度も行った事は無いけれどね」
「じゃあさ久遠村に遊びに来ない?
小さな村だけど漁港はデカいし、山の上からは海が丸見え!
って自然しか無いって言っているようなもんか、でも自然豊かで良い所なんだ」
「久遠村かぁ……」
「1日くらい空かない??」
「うーん……日帰りだったら大丈夫かな?」
「マジ!?
俺が村を案内するからさ、気楽に来れば良いよ」
「そうね気楽に……」
気にならないと言えば嘘になるでしょ?
大好きだった母の出身地だし、独り暮しの都会の息抜きに自然ってのも惹かれてしまう。
だからかも知れない、私が初めて会った陸さんの話を受けてしまったのは。
まさか久遠村に、あんな出来事が待ち構えているなんて微塵も思わないで、私は簡単に頷いてしまった。