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弥輿(みこし)
第2章 久遠村
大きな漁港を通して見える青い海。
小さな町を挟んで見える森が深い山。
此処が久遠村。
あのbarでの話から10日後、仕事の休みを利用して私は久遠村にやって来た。
始め交通機関を使って来るつもりだったんだけど、陸さんが交通機関では何十分も歩く事になると言い、私の住む街まで車で迎えに来てくれて、簡単な案内と共に久遠村をドライブ中。
久遠村に入るには道は1本しか無く、しかも山を削って作ったトンネルを通るという孤立した集落。
トンネルを抜ければ、今言ったような青い海に森深い山の光景が現れた。
「店とかは村の中心地に密集してるんだ、と言っても商店2つとガソリンスタンドに郵便局、病院に蕎麦屋に居酒屋、最後に俺がよく行くスナック、そんな程度だけど」
「本当に田舎だね、今時コンビニすら無いなんて凄い驚き」
「コンビニという話もあったんだけど村長が反対して、そのまま立ち消え
この村は村長の発言が強いんだ、村長でもあり漁港の運営管理もしてる」
「田舎だとアリなのね」
小さな村で村長の力が強いのはお約束みたいなもの、その程度は私だって理解は出来る。
会社と変わらないんだから、縦型社会って言いたいんだよね?
「その村長が如月さんのお母さんと同じ宗方なんだ
久遠村で宗方と言えば誰も逆らえない、田舎ならではの風習かな」
「そうなの?
私は戸籍を見て母の旧姓を知っていただけで、母本人からは家の話は殆ど聞いた事が無いのよ
ただ久遠村には大きな漁港と、山の上に神社がある……それだけ」
此は本当だよ、母の話の中で子供の頃は漁港で遊んだとか、神社に度胸試しに行ったとか、聞いたのは母が子供の頃の話だけ。
だから母がどうして久遠村を出たのかすら私は知らない、母から教えて貰えなかったから。