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スパイス
第1章 Dear 聡
部屋で寛いだ後は、泊り客貸し切りの会場でバイキングを頂いた。
海の幸が豊富に並んでいたり、鉄板焼コーナーでは注文を受けるとシェフがその場でステーキを焼いてくれたり、寿司職人が直々に握ってくれたりと、いたれりつくせりの中で贅沢なディナータイムのはずなのだが……
聡の隣に座る星空は、物珍しい料理を私が運んでくると目を輝かせて喜んだ。
聡は星空を見ながら、アワビの刺し身で先にビールを飲み始めていた。
『あれが食べたい、これが食べたい』と私に指図し、聡は席を動かない。
『自分の目で見て欲しいものを皿に入れるのもバイキングの楽しみなのに……』そう思いながらも、自分の思った事を素直に言えない。
不満を言えば、口八丁の聡に言い負かされ、更に不機嫌になられると余計面倒臭いからだ。
言っても変わらない人を相手にするのは時間の無駄だということも学習した。
聡と星空の好きなものを一通り皿に取り、ファミレスのウェイトレス並に働いて席に戻る。
酔っ払ってご機嫌な笑みを浮かべる聡は、私のグラスにビールを注いだ。
そして乾杯をする。
「夏帆、今日は美味いもん沢山食べなよ。
今日は星空の誕生日、夏帆も母親になった誕生日だもんな。
おめでとう、星空、夏帆」
「有り難う。聡君」
これだけ嫌なとこ満載な男だからこそ、たまに見せる優しさに喜びを感じて幸せにしてしまう魔力ある。
聡はこうして自分の嫌ところを私に我慢させるんだよね……
だから、ズルイんだよ!! 聡