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第9章 欲しがりや
奨学金制度を利用して大学に通い、ひとり暮らしの希望を叶えた俺は、家庭教師のバイトをかけもちしながら生活を繋ぎ、最低限の仕送りをして貰って、なるべく新婚の親父に迷惑かけないでやってきた。
疲れ果てて、自炊する元気もない時は光輝が飯をご馳走してくれた。
「お袋がさ、何だか色々送ってくんのよ。俺一人じゃ食べれないって」
光輝のお袋さんは料理が得意らしく冷凍保存して温めるだけで食べれるものや缶詰、たまに米沢牛なんかも詰めて、光輝に宅配していた。
質素な俺のアパートに比べると、学生には贅沢なマンションに住み、至れり尽せりな生活を送っていた。
「いいな。山形の金持ちボンボンは」
ほんの少し皮肉を込めて言ったりしたが、光輝はそんな事にも動じずに、「まあ、食べてくれよ」とすき焼きなんかを和香奈に作らせてご馳走してくれた。
甲斐甲斐しく、台所で野菜を切り、すき焼きの用意をする和香奈。
まだ看護学生で、光輝とは通っていた眼科で知り合ったというから驚いた。
すき焼きをつっきながら、そのエピソードは語られた。