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第9章 欲しがりや
1つ年上の和香奈は看護学校を卒業すると、俺達が通う大学の近くにある総合病院で外科のナースとして働き始めていた。
和香奈が外科を選択したのは、光輝との将来的なものを考えての事だったはずだ。
光輝が実家を継がないとしても、何かしらの役に立ちたいと思う気持ちがあったからだと思う。
俺と光輝も就職活動の準備を迎える時期にさしかかっていた。
そんなある日、光輝が久々にさしで飲みたいなんて言われて、家庭教師のバイトが終わってから指定された居酒屋に行った。
先に光輝が来ていて生中を静かに飲んでた。
直ぐに俺も生中を頼み、光輝と乾杯してからグイグイ飲み始めた。
「美味いな」
「美味そうに飲むね、歩は」
「喉カラッカラなの。次を頼んどこう。ビールが美味いと思える歳になったんだな。ガキの頃はこんな苦いもんをよく大人は飲めるよと思ったよ」
「だよな。ジュースの美味い年頃にビールはゲロマズだったな」
「そうそう。あっ、俺、腹も減ってたんだわ。焼鳥の盛り合わせとタコワサ、イカゲソ揚げがいいな。光輝は何か頼んだ?」
「あっ、いや、歩が来てからって思ったから。
取り敢えずそれでいいんじゃね。俺ももう一杯生頼んでおこうかな」
次の一杯が来るまで、残りの生を飲みながら、おとうしの切り干し大根をつまんでいた。
光輝が俺の様子を伺いながら話し始めた。