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第9章 欲しがりや
ーー


 「歩は就職の目星ついた?」

 「どっかの企業に潜り込めたらラッキーくらいだ」

 「歩なら大丈夫なんじゃない?」

 「さあね。来年にならないと分からないね」

 「そっか。俺さ、時々歩が羨ましいって思うんだ。
頭が良くて考え方も俺なんかよりずっと大人だし、スマートに生きてるっうか、そういうとこがさ」

 「意外だな。光輝が俺を羨ましがるなんて」

 「自分にないもの持ってる奴を羨ましく思うのって、一番正直な感情なのかもしれないよな」

 「なに自分哲学してんだよ。俺は光輝の方が羨ましいわ。
考え方がエア並に軽くて堅苦しくないし、それでいて要領も良くて柔軟性ありすぎるとこ?」

 「それ、遠回しに狡賢いって事だろ?」
 
 「狡賢くても憎めないとこは、俺には一生掛かっても得る事の出来ない才能さ」
 
 「歩、それ褒めてねーから」

 いつもは他愛のない話をして、和気藹々と盛り上がるはずなのに、何故かノリの悪い光輝。

 お代わりの生が運ばれて、頼んだツマミがテーブルに全部運ばれた後、「実は歩に相談があるんだ。和香奈の事で……」光輝は言いづらそうに切り出してきた。


 その様子を見て、余り良い話でないのは予想がつく。
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