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第10章 パッション
ーー


 光輝の言ってる事は失礼極まりないし、『お前何様だよ!』とキツイ突っ込みを入れたやりたくなるほど図々しい。
でも、こいつの事をそう思えないのは、この優しい物言いなんだよな。
怒鳴り声や喧嘩が絶えない家で育った俺にとって、その声は心地良い。
話していても、ちゃんと認めるとこは認め、ソフトに返そうとする。
女たらしには違いないが、女がこいつを放っておけないのは、イケメン、お洒落、癒し系の声、この三拍子が揃っているからだ。
尚且つ、たまに見せる寂しそうな影は、母性本能みたいなもんを擽るんだろう?
男から見たら、身につけたい要素を持ち備えている嫌な男として、敬遠される人種には違いないが…。


「和香奈は本当にいい女だと思ってる。
夢中になって好きになった時期もあった。
でもさ、俺、浮気は辞めれなかった。
多分、物足りなさを心の何処かで感じていたからだと思う。
他の子と遊びたい欲も捨てられなかったんだよね。

 そんな時だったかな、こっち(関東)に出てきてる高校の時からの友達がさ、舞台を見に来ないかって誘われたんだ。
そいつ俳優志望なんだけどね、まだ劇団員で芽が出てないっうか、先の見えない夢に向かってひたすら頑張ってるわけよ。
俺的には舞台なんて全く興味は無かったんだけど、そいつが準主役を取れた舞台だっていうし、暇してたから、まぁいいっかってノリで、都内まで見に行ったわけ。
そしたらさ……その舞台を見て、魂を揺さぶられるほど感激したっていうか、心持って行かれたっていうか……」


 だから?
何が言いたいんだよ?
俺は静かに心の朗読
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