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第10章 パッション

 暫く笑っていた光輝が落ち着きを取り戻してきたところで、「……で、そのブスがどうしたんだよ?」と聞いてみた。

「突然音楽が流れてスポットライトを浴びる中、リクルートスーツを脱いで、ピンクのレオタードになって他の劇団員達と踊りだしたんだ。
華麗に踊りながらゴミを積み上げていくんだよ。
その姿はレディーガガのように奇抜でありながら、羽生結弦のSEIMEIのような清らかさを感じさせ、見るものを虜にしていく不思議なパフォーマンス性があるんだ!
まさにゴミ屋敷に舞い降りたプリマドンナだ!
余りにも美しすぎて……俺はポカンと口を開けたアホ面で彼女を見ていた。
持っていかれた瞬間だった。
『ブスなんて言ってしまってごめんなさい』と何度心で謝罪したか」

「で、その女に惚れたと?」

「うん。パン子に心奪われて今に至る」

「パン子?」

「彼女の芸名が焼きそばパン子って言うんだ。
由来は焼きそばパンが大好物だからだって。
ふざけた芸名って最初は鼻で笑ったけど、そんな自分に往復ビンタしてその生意気な態度を戒めたいくらいだ。
もう、その一風変わったセンスすらも好き」

「で、そのパン子の事を聞いて欲しかったわけ?」

「いや、パン子はキッカケに過ぎない。けど俺のパッションの源なんだ」

「光輝……和香奈を振るって聞いた時点では凄え嫌な奴だったけど…今のお前かなり面白いよ?」

「俺、今の自分が好きだ」

 自分が好きって言えるのって、かなり幸せなんだぞ…
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