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第10章 パッション

 光輝のパッションに纏わる話は長かった。

「俺はね、パン子に一目惚れしたわけで、ダチに何とかパン子とお近づきになれないかと頼み込んだんだ。
そしたら、あっさりと会わせて貰えて『ヨッシャ!』ってなるじゃん。
舞台が終わった後の反省会をするっていうから、俺はかなりキメていったんだ。
パン子に花束なんか持って行ってさ。
ところがだよ、俺が呼ばれたのは一観客として、舞台の感想を聞きたかっただけで、『良かった、素晴らしい』だののありきたりな言葉を連発したとこで、彼女に響かないんだ。
俺はあっという間に浮いた存在になり、熱く語る舞台仲間の輪から蚊帳の外さ。
で、普段の俺ならつまらないなら早々と退散すんだろ?」

「まあね」

「でもな、ぼっち気分を味わいながらも、その熱く語る姿を見ていて羨ましくなったんだ。
俺、熱く語れるもんなんて何もないんだよな。
そしたら、パン子は俺にそっと輪に入れてくれてさ、俺の事を聞いてくれたんだよ。
『自分がワクワクしちゃうくらい楽しく生きてる?』ってさ。
やっぱイイ女だよな」

「で、まさか光輝……今から俳優を目指したいとか言うんじゃ?」

「オイオイ!歩、先走るなよ〜
そうじゃなくて、パン子は俺が忘れかけていたパッションを呼び覚ましてくれたんだ」

 『あのさ〜パッション光輝さんよ、早くオチを頼むよ』と心で呟いた俺。
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