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第10章 パッション

多分、意欲さえ持続すれば光輝は夢を叶えられるだろう。
これから就職活動する俺にとっては、夢をまだまだ追いかけるだけの余裕がある光輝が羨ましくも思えた。
俺だって金に余裕があれば、大学院に進んで様々な知識を身につけてから就職したいとさえ思う。
でも、俺の家の経済的な事を考えたらこれ以上は望めない。
ワクワクするにも金の心配をしなきゃならない。
時々、俺の中の悪魔は囁きかける
親父と母さんが離婚しなかったら、ひとりっ子だったし、将来の夢を追わせてくれただろう。
仮に母さんと離婚しても、親父が再婚しなければ夢は追い続けられたはず。
夏帆さんと星空を養う今の親父にこれ以上の負担はキツイだろう。
夏帆さんや星空は好きだ。
家族になれて良かったと思っている。
でも……もし、親父が夏帆さんと巡り会わなければ、また違った人生を歩めたはず。
目の前の光輝を言葉では応援する。
でも本心は、そんな贅沢な夢を語る光輝が羨ましい反面憎らしいと思った。
「お前は恵まれ過ぎてんな」
「えっ?」
「頑張れよ、パッションに向かって」
「うん。頑張ってみる」
「やっぱり和香奈には本当の事を伝えな。
納得出来ない理由は後を引きずる。
お前は少しくらい憎まれた方がいい」
「歩?」
恨まれちまえ!
お前はそれだけの事をしたんだからさ。

