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第12章 弱い心 溺れていく性

 何度抱き合ったのだろう。
これっきりだと思ったから、互いを曝け出して燃え上がれたのだと思った。
この時、二人の間に好きという気持ちがあっても、それは友達としてであって、これから恋人になるなんて未来を考えてもいなかった。
ただ、ガリガリに痩せて空元気の不健康そうな女が、たった一瞬でも嫌な事を忘れて夢中になれるものを見出して欲しかった。
それがセックスという手段だった。

 光輝に突然別れを告げられ、立ち直れない心と身体は、俺に抱かれる事によって、もう戻れないのだと区切りをつけさせてやりたかった。
今まで保った形を壊せば、元通りにはならない。
恋とか愛とか人は簡単に口にするが、壊れてしまう覚悟まであって言葉にするわけでもないだろう。
結婚という絆があっても、壊れる時は簡単に壊れてしまう。
出会いと別れも繰り返して人生を生きるのは、この世に生を受けた者の使命。
親父が母さんと別れても、夏帆さんと新しい家庭を作り、星空という子に恵まれ、また違う人生を歩んだ。

 人生は自分で変えたいと思う方向に動いていくもんなんだ。

 和香奈が光輝と別れた事も冷静に考えれば、仕方がない事。
『ひとつの恋が終わりを告げただけ』

 そんな今を抜け出す為に誰かが必要だった。
それがたまたま俺だっただけなんだと思ってたんだ。


 

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