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第14章 今があるのは

 そんなある日……俺は扁桃腺を腫らして高熱で倒れた。
こんな時に頼れるのは、いつもならばあちゃんだった。
しかし、高熱のせいか、身体はだるくて実家まで帰れずに布団でうずくまっていた。
バイトを休む事を連絡し、ひたすら眠っていると、『ガチャガチャ』とドアが開く音がし、「歩居るの?」と和香奈の声が聞こえた。
布団にうずくまる俺を発見すると、「大丈夫?」と声を掛け、返事をするのも億劫そうに対応すると、和香奈の手のひらが俺の額を覆う。

「熱は……あるね」

「扁桃腺もちなんだ」

「じゃあ、まだまだ高くなるかも。病院は?」

「行けてない」

「だるいよね」

「……うん」

「かかりつけある?」

「…ない」

「耳鼻科の方がいいかもね。確か商店街の方にあったね。
立てる?タクシー呼ぶから。病院に行こう。悪化しちゃうし、診て貰って薬も貰えば楽になる。だるいだろうけど我慢だよ」

 和香奈はタクシーを呼び、俺の身支度を整えて病院に付添ってくれた。
少し混んでる待合室で隣り合わせに座り、ぐったりして寄り掛かる俺を支えた。

 小さな細い肩。
でも何よりも頼りになる肩。
熱にうなされながら、その支えを俺は手放したくないと思った。
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