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第14章 今があるのは

 眠りから覚めると、ガラガラと洗濯機が回る音や何かを作ったであろう匂いが台所から漂う。
後々、卵とネギの味付け薄めで出汁のきいたおかゆを出され、俺は『美味い』を連発しながら食べたんだ。
それに冷蔵庫には飲みきれないほどの飲料水。
優しさが溢れている中で、幸せな気持ちまでいっぱいになった事を昨日の事のように今でも思い出す。




 暫く布団の中でウダウダしていたら、頭上から和香奈の声がした。

「歩、起きた?気分はどう?」

「あっ、ああ…さっきより楽」

「汗かいたら脱いでよ。洗濯しちゃうから。勝手に洗濯機借りたよ。もう、歩、洗濯物が溜まってる。部屋干しにするね。暖房かけてるから加湿効果あるし、喉にいいから。ラック借りたよ。あ、ラックに掛かっていた服は畳んでおいたからね」

 世話を焼いてくれるのは、時に煩わしさを感じるが、今は世話を焼いてくれる人が居る事に有難く思う。
まだダルさの残った身体を起こして、和香奈を見た。
お礼はちゃんと目を見て言わないと……



「何から何まで有難うな。和香奈が居てくれて助かったよ」

「たまたま寄ったら歩倒れてるし、焦ったけど役に立てたみたいで嬉しい」

 こんな風に言ってくれる女を粗末にしたら罰が当たるな。

「俺が嬉しいよ」

「そっかそっか。弱音を吐く歩も可愛くて好き」

「弱音を吐ける女が居るからだ」

「歩……」
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