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第14章 今があるのは
「イイ女だな。和香奈は。
看護師はお前に似合ってる。絶対辞めるなよ。
俺みたいな病人が明るい気持ちになれる」
「辞められないよ。私には看護師しかないもん」
「俺と付き合ってみるか?」
「えっ?」
「惚れた。今、本気でお前を好きだって言える。
お前じゃなきゃ……そういう気持ちになれるまで言えなかった。
いろんな事考えると軽はずみに言えないし、また和香奈を傷つけるからさ。
でも、いつかは言わなきゃと思った」
「歩が卒業したら、バイバイになっちゃうかもって思っていた。
光輝の事もあるし、重荷になりたくなくて……。
でもいつの間にか歩を好きになっていて、さり気なく好きを伝えてもはぐらかされていたから……
だからバイバイになっても、ちゃんと弁えなきゃって……」
涙声になる和香奈。
健気に俺を思っていてくれた事は気づいていた。
でも気づかない振りをしていたんだ。
狡い俺。
でも、狡くなれなくなった。
「ちゃんと付き合おう。
友達以上、愛のあるセフレなんてさ……俺達に似合わない。
4月から俺も社会人だろ。
やっとお前と肩を並べられる。
学生で稼ぎもなく、社会に出てる女をただ好きだって言うの、格好悪いだろ。
俺はね、そういうとこ見栄っ張りなんだ。
分かれよ」
狡さを格好良い言葉で隠す俺は、本当に狡い。
狡いけど芽ばえた本気を汚したくなかった。