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第15章 タイミング

 店の前で先に着いた和香奈が待っていた。
手にはエコバッグをぶら下げている。

「お前、何持ってきたの?」

「さっき買ったお土産のアップルパイだよ。
いくら保冷剤入れて貰っても、車内に置きっぱなしにして何かあっても嫌じゃん」

「有り難う。和香奈鍵貸してくれ。スーツケースはトランクに置かせてくれよ」

「あっ、あ、そうだね」

「俺、スーツケース入れてくるから、先に店に入ってな」


 ガラガラとスーツケースを引き摺って和香奈の車に仕舞い込む。
嬉しさでニヤけてしまいそうだから、その顔は見せない。
俺が和香奈に惚れたのはそんな何気ない心遣いも出来る女だから。
親父達より先に葵に紹介する事になったが、俺には出来過ぎたイイ女なのは、葵にも伝わっているはずだ。
葵は今日俺と出会った事を家族に話すだろう……
疎遠になったとはいえ、少しでも俺が幸せだと思って貰わないと、今までの辛さが報われない気がした。
ちゃんと就職もして彼女も居る。
あの人が捨てた夫は再婚もして幸せになっている。
いずれあの人の耳に入った時、ほんの少しでも罪悪感や悔しさを味あわせてやらないと……
そうじゃないと、俺や親父を否定されたまんまの気がしたんだ。
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