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第17章 世界一の不器用者


 私は聡が好きで失いたくない気持ちに正直になり、結婚した。
歩という息子が居るのも全て承知の上だった。
愛の力で何とでもなるなんて、その時は真剣にそう思い、その為の努力を惜しまないで、自分、聡、歩が過去の辛さを乗り越えて幸せになるんだとそう信じて疑わなかった。

 聡と結婚して数カ月が過ぎた頃、たまたま実家に用事が出来て転勤先の長野から一時的にこっちに戻ってきた麗子と久し振りに会った。
その時に交した言葉が蘇る。
ランチビュッフェを食べながら、ドリンクバーで好きな飲み物を何度となくお代りし、女子トークに花を咲かせた。

『夏帆、今度は幸せになってよ。
私もハルも夏帆の幸せは心から祈ってるし、聡さんと巡り会えて本当に良かったと思う』

『有り難う。今、本当に幸せよ』

『子供が居る人ごと愛するって簡単じゃないと思うの。
夏帆はよく決心したよね』

『そうかな?逆に有り難うだよ。
もうさ、手が離れるまで大きくなるまで育ってるしさ、子育ての苦労なんて微塵もなしで息子を手に入れたんだよ。
自分が遊んで楽している時、聡君はしっかり子育てしていたんだもん。
そんな子と縁があって自分の息子に出来るなんてさ、ラッキーでしょ!』

『そう思える夏帆が偉いんだよ。
世の中の子連れ再婚する人が夏帆のような考え方の人ばっかだったら、悲しい事件もなくなるんじゃない?』
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