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第17章 世界一の不器用者
『ハルはね、いい男よ。
麗子の事をちゃんと愛してる。
全然痩せないのは麗子の不味い料理もちゃんと食べてくれるんでしょ?
愛がなきゃ……無理だからね!』
『あのね、夏帆、あんたの毒を含んだそのお口ごと聡君は愛してるわけ?
しらばっくれて結婚する気だな?』
『私は正直なのさ。
あのドブ川のように淀んだカレーはね、トラウマなの!』
『あっ、あれは酷かったね。
でも今はね、マトモなカレー作れるからね!』
『へえー麗子もちゃんと奥さんしてるんだ?
レトルトカレーを鍋にあけて煮込むのは禁止な!』
『レトルトカレーに蕩けるチーズのせてチンしてみろ!
カレーホンデュになるから!』
『それは美味そうだね』
『これでも料理の腕を上げたのよ!』
『それ料理って言わないし!』
くそ真面目に人生を語れば、途中脱線してじゃれ合いのようにお互いを貶して笑い合う。
私と麗子はそんなマブダチだ。
そして、そんな麗子と私を苦笑しながら見守るハル。
『夏帆ちゃんも麗子さんも機関銃なんだよな。
疲れないか?喉乾かないか?
息継ぎしてんのか?
本当によく喋るよな……でも俺が無口な方だから二人を見ていると楽しくなる』
そう言ってくれるハルも心地良い。
麗子とハルの居る空間は本当に楽しくて、思い出してはあの頃をよく懐かしんだもんだ。