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第17章 世界一の不器用者

『子供の居ない人生は、夫婦の縁をより深く築いて、共に人生を楽しむ為の神様のはからいなのかもよ?
私も聡君と子供が授からない時は、そう考えて二人で人生を楽しんでさ、どっちかが先に逝く時に、バイバイ。有難う。ってお礼を言って別れられるような、理想の夫婦になりたいもん』
『だね。死ぬまでLOVEがある夫婦がいいね!』
『棺桶に愛羅武(あいらぶ)ハルなんてペイントすんなよ!』
『夏帆……何で昭和の古傷を抉るかな……この悪魔が!』
『不思議だね。麗子には安心して悪たれついて甘えられる』
『本当に不思議だよね。夏帆だと許せちゃうのは』
『ねえ、麗子。もうそろそろさ、自分はかなりのどMという事に気づいた方がいいよ』
『あっ?やっぱりそうなのかな?』
『誕プレに手枷足枷と鞭でも贈ろうか?』
『子供が出来るかもね?』
私達は顔を見合わせて笑う。
かなりお洒落なレストランで少し贅沢なランチを食べながらする会話ではないのは重々承知の上でも、上品になりきれない私と麗子。
それでも、またドリンクとデザートをお代りして席に居座る。
『ねえ、私ら図々しいババアになる素質かなりあるね」
『もう立派に図々しいババアだよ』
『だね』
また顔を見合わせて笑い、どうしようもないババアになったと再確認し、開き直る。
幸せな時間があったから、やや面倒臭いリアルが鬱陶しく感じる。
楽しい時間が恋しいと心は正直に動くものだから……

