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第17章 世界一の不器用者
麗子の前で口にする事はなかったが、ハルは私や麗子よりも遥かに賢い。
だから、子供が出来ない原因は自分にあるという事も気づいているはずだ。
あんまりにも麗子が子供を欲した場合は、身を引く覚悟すらしそうなほど、人としての器も大きな男だ。
麗子は美人でスタイルも良く、クラブの雇われママをするほどの女だ。
男が放っておくはずもない。
麗子をものにするには、かなりの我慢も強いられるだろう。
嫉妬というものと常に向き合い、それを表に出さずに、麗子をホッとさせる居心地の良い男でいるなんて……
私が男なら絶対に嫌だし、麗子タイプの女は本能が避けるだろう。
でもハルは違った。
麗子に惚れたら真っ直ぐにその恋をぶつける。
誰しもが麗子の鴨で終わると思っただろうが、その想いが麗子にちゃんと届いて、麗子そのものをイイ女に変えてしまう魅力的な男。
そんな男を選んだ麗子も賢い女なのかもしれない。
隣の芝生はどこまでも青く見える。
自分が手入れをするわけでもないから、根っこの部分には目が行き届くわけがない。
友達に夫婦間の話を笑って話せるうちは幸せなのかもしれない。
愛があるうちは互いに嫌な部分が鼻について喧嘩だってする。
自分を誰よりも分かって欲しくて甘えたいから。
麗子にはハル
私には聡
青く見せながら、枯らさぬように守りぬく役目を背負った。