この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
スパイス
第3章 これは恋
「私は和食料理屋の女将の娘です」
「はい」
それは先ほど聞きましたが……
「あの不気味なカレーを一口食べた瞬間に不味さが口の中に広がり吐き気を催しました。
そして、私はその不味さの原因を瞬時に解明したのです」
「どのように?」
「まず、あの不気味な匂いは冷凍した肉のせいです。
解凍せずに鍋にぶっこんだのは間違いないと確信致しました。
それに、野菜のアクなど取る手間も省いて、そのまんまカレー粉を入れてしまった手の抜きようが、隅々までそのカレーの味となり、表現されてました。
自信のない料理初心者がやってはいけないタブーを犯したカレーという事です。
肉の解凍は当たり前の事です。
それと、アクはおたまで取り、ローリエで更に肉の匂いを消し、コンソメで野菜に味付けするくらいの気合いが欲しかった。
野菜が十分やわらかくなってからカレー粉を入れるくらいの余裕も。
麗子のカレーは世界一不味く、私は一年間ほどカレー断ちをしました。
何故なら、カレーが目の前に運ばれると、あの日、あの時のカレーの味がトラウマのように離れなかったからです。
本当に世にも恐ろしいカレーでした。
あの不味さを超える方には生涯私は出会えないでしょう…」