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永遠の愛を奪って
第11章 ひとりにしないで
仕事で嫌なことがあっても隠し通せるのに、あまりにも嫌な出来事を目にしたばかりだから空元気を出すこともできない。
しゅんとして立っていると、椿さんはデスクの上に乗っている値段が高そうなデザインの缶を手に取って開けた。
その缶の中に入っていたのは一個ずつ包装されている数種類のクッキーやラングドシャ。
椿さんは全ての種類を取ってから私に差し出してくれた。
「何があったか分からないが美味いクッキーを分けてやるから機嫌を治せ」
「ありがとうございます……」
渡されたクッキーやラングドシャは片手では持ちきれない量だったから両手で受け取った。
沈んだ気持ちは変わらないけど、お菓子はどれも美味しそうだ。
「この辺ではなかなか手に入らないお高いお菓子だからなー。食べると笑顔になれるぞ」
今は椿さんの優しさがいつにも増して温かく感じて身に染みる。
いつもからかってくるだけの面倒な先輩だと思っていた。
でも椿さんはいい人なのかもしれない。
そして、少しだけ男として意識してしまった。