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ベストパートナー
第1章 アキ
 旦那は縛り付けたいタイプである。おそらくは、それなりに肩書きがある様だ。
 俺は偉いんだ! そんな感じで、睨みを利かせているのだろう。


「……夫は一流企業の人。これはLINEでもしましたね。もう少し言うとそれなりの管理職で、それなりの出世欲もあります」


 アキが語り出した。
 俺はそれを止める。何故ならLINEのやり取りで、情報を知ってるからだ。
 再び聞く必要は何もない。
 

「そうでした。スミマセン」


 煙草を唇から外し、灰皿に押しつけ火を消す。
 そしてガムを噛みはじめる。煙草臭を消していた。
 それを見て俺は、アキの横に座る。もちろん同意をとり、快く応じてくれた。


「少しでも解放されたい……」


 アキが体を寄せてきた。煙草臭とガムの甘酸っぱい匂いが、打ち消し合う息を漏らす。
 煙草臭が旦那なら、俺はガム……か。
 俺は手を握る。


「ありがとう!」


 ニコリと笑ってくれた。どこか影があり、なんだか痛々しい。
 おそらく俺に体を許した理由は、旦那からの逃亡だろう。それが仮初めで、何も意味がないことも承知でだ。
 ここに来て何か戸惑っている様にも見えた。


「私は後悔してません! 強がりではなく、本当に!」


 アキが近くにあったスマホの画面を開き、何かをやり始めた。俺はそれを少し不思議に見ている。
 

「これが今回、私がテルさんに体を許した理由です」


 アキがスマホを見せた。
 するとそこにはベストパートナーが映る。そして指でメニューを開いていき、無視リストにたどり着いた。
 そこを開くと、何人かの男性ユーザーがいる。
 人数は多いだろう。
 

「ここの男性はみんな変態ばっかり! 最低です! そして嘘吐きばっかり……特にこの人……いいえ、コイツ!」


 アキが涙目になりながら、一人のユーザーを指差した。


 
 
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