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ベストパートナー
第1章 アキ
 そこには画像が張られていて、ユーザーの顔がある。
 少しデフォルメされた顔に、両目に星がついていた。
 歳的に中年男であるのは間違いない……が、俺はこの写メでピンと感づいた。
 

 アキの日記の写メに貼ってある男……旦那! アキの旦那である。

 
 俺は自分のスマホを持ってきて、ベストパートナーを開く。そして男性ユーザー検索を始めた。
 すると……いた!
 当たり前だけど、いた。


「自分にはお前だけ! 浮気はしない! だからお前も俺だけを見ていろ……バカヤロー嘘吐き!」


 アキが泣き出した。
 そう言うことか……だから腹いせに、俺に体を許したと見るのが普通か。
 正直複雑だ。
 もし旦那がベストパートナーに居ることが知らなかったら……いや、使ってなかったら彼女を抱けなかった。


「テルさん、私どうしたらいい?」


 アキが難しい質問をしてきた。
 そんなこと言われても、俺にはわからない。
 

 わからないが、離婚はしない方が良い。
 

 即座に思った。
 何故なら俺はバツイチで、未練があるからだ。
 

「私ね、二十代前半で今の旦那と結婚したの。歳的には一回り年上の男性だったけど、どこか惹かれた……その時は。でも今は……」


 アキの泣き声に、俺は戸惑う。
 しかしそれでも言えること。
 それは……。


 離婚はしてはいけない!


 これだった。旦那と別れたとして、アキに生活ができるだけの甲斐性はない。慰謝料と言っても、微々たる物で苦しいだろう。それに子供達のこと……俺の離婚とは、訳が違う。


「私は堪えるしかないの?」


 アキが言った。
 俺は首を横に振る。
 出方を見た方が良い! そう思った。つまりは弱みを握り、旦那の主導権を、アキに少しでも握らせるために様子をじっくりと見るのがベターだと感じた。


「ベターですか」


 アキが、言った。
 

 
 


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