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ベストパートナー
第3章 ヒトミ
「ごめんなさい、美味しいですよ。ふっくら炊けてますし」


 屈託のない笑顔に、心が癒される。
 なんだが、嬉しい。
 

 ヒトミが鶏肉のソテーを見る。そして何故か手を休めた。しばらく考え、一口食べた。


「美味しい、ササミですよね」
「はい、美味しいでしょ? マサルく……いえ、マスターのランチ」


 ん? 俺は声の方法に顔を向ける。そこには葵ちゃんがいた。
 相変わらずムッチリした体で、黒髪セミロングのいい女。


 ……えっ? いつから葵ちゃんと呼べるようになったのか?
 それは簡単、利用率が高いから。
 知らぬ間にそれなりに覚えてくれたし、そこそこな繋がりができた。
 

「へぇ、そうなんだ。私、少し前まで、陸上してましたから、今でも油と砂糖に抵抗があるんです。辞めたのに、バカですよね」


 おっ、ヒトミは葵ちゃんに拒絶反応示さない。それどころか楽しそうに話をしていた。
 

 楽しそう、俺の存在を忘れるくらいに。


 しかし一つわかった。
 ヒトミは陸上の選手だったこと。何かはわからないが、体育館での彼女の走り方から納得がいく。
 

「お客さん、お連れの方が待ってますよ」


 葵ちゃんが俺に気づいた。
 ニコリと笑う。凄くいい。


「あの、テルさん」


 ヒトミが呆れている。
 俺はしどろもどろ、慌てながら珈琲を飲む。
 酸味があり、それでいて思いっきり苦い。
 まさに今の俺、そのものだった。


「ごめんなさい、テルさん。私、葵がいけないんです」
「そう言うこと! 葵ちゃん、ランチできたよ。あちらのお客様に……」
「はい、マサル……マスター」


 へぇ、マスターはマサルと言うのか。
 別にどうでも、いいけど。
 葵ちゃんが、他のお客さんにランチを持っていく姿を俺とヒトミが見る。
 

「何だろう? 凄いフェロモンが出まくってる」


 ヒトミがポツン。
 俺も激しく同意する。
 でも、葵ちゃんはここまで。


 その後ヒトミと話をしながら、ランチを食べている。
 まあ俺は珈琲だけだけど。


「テルさんはランチを食べないんですか?」


 俺は強く頷く。
 ヒトミを見ていることが、ご馳走かも。


「えーっ!」


 ウサギのリンゴを頬張りながら、ヒトミが笑う。
 なんだが、こうポイントゲット! 

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