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第5章 涙の条件

「ひさと…あんまり両親を困らせるな…おじさんたちはイジワルでリビーさんと別れろとは言うていないのだよ…ホンマにイジワルで言うていないのだよ。」

半兵衛の言葉に対して、ひさとは半兵衛に怒りを込めて言いました。

「ふざけるなよクソオジ!!どうしてリビーと別れなければならないのだ!!」

ひさとの言葉を聞いたよしみは、泣きそうな声でひさとを説得していました。

「ひさと!!おかーさんたちはイジワルでリビーさんと別れてくれとは言うていないのよ…ひさとはまだ若いからもう少し時期を遅らせた方がいいと言うているだけなのよ…」
「ふざけるなよ!!ほんなら（男性従業員さん）がリビーと結婚しなければならないのだよ!!」

ひさとがますます怒り狂ってしまったので、よしみはますます泣きそうな声でひさとに説明をしました。

「あのねひさと!!（男性従業員さん）は終戦の時にものすごくつらい想いをしたのよ!!（男性従業員さん）は終戦の時にエストル（サハリン）から引き揚げる際におかあさまと幼いきょうだいたちとはぐれてしまった…おとうさまはシベリア抑留後に収容所でソ連兵からのゴウモンを受けて亡くなったのよ…（男性従業員さん）はずっとおじさんカタの家で暮らしていたから…そろそろ何とかしてあげたいと想っていたのよ…」
「だからオレにリビーと別れてくれと言うことなのか!!」

ひさとは、よしみに対して『オドレら呪ってやる!!』と言いましてこぶしを振り上げましたので、はたにいた半兵衛が必死になりましてなだめていました。

「ひさと…わかってくれ…ひさとはおとーさんとおかーさんがいるじゃないか…おとーさんとおかーさんがいる間は…メンドーみてもらえ…たのむ…首をたてにふってくれ…ひさと…結婚はおとーさんとおかーさんがおらんなってからでも遅くはないんや…この通りだ…首をたてにふってくれ…首をたてにふってくれたらおじさんはなーんにも言わんから…」

半兵衛は、ひさとに対して首をたてにふってくれたら問題は解決するからと言いまして、リビーさんを男性従業員さんにゆずってくれと言うていました。

その時でありました。

端で聞いていたセヴァスチャンじいさんが、とつぜんえげつないことを言いだしたので、事態がさらに悪化してしまったのでありました。