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乳房星(たらちねぼし)・再々修正版
第8章 春遠からじ・2
『悲しき口笛』『港がみえる丘』『リンゴの歌』『青い山脈』『上海帰りのリル』『港町十三番地』『いつも夢を』『君だけを』『高校三年生』『函館の女(ひと)』『1本どっこの歌』『好きになった人』『花の首飾り』『自動車ショー歌』『空に太陽がある限り』…

60年代後半あたりまでの歌が流れていた時には、施設長さんと一緒に楽しく歌って過ごしていた…

『ちいさい秋みつけた』『精霊流し』『あずさ2号』『遠くへ行きたい』『空港』『愛の始発』『北の宿から』『愛の終着駅』『ドナドナ』『氷雨』『かもめはかもめ』『いい日旅立ち』『酒と泪と男と女』…

号泣ソングが流れていた時は、生まれてすぐに別れた実母のことを思って泣いてばかりいた…

そんな時には、施設長さんは泣きじゃくっている私を乳房(むね)に抱きしめてなぐさめていた…

「よーくんよしよし…生まれてすぐにママと別れてしまったのでさびしいのね…」

施設の読み聞かせ会で『シートン動物記』より『ギザ耳うさぎ』の紙芝居だった日に流れていた歌は、森進一さんの歌で『おふくろさん』と中村雅俊さんの歌で『ふれあい』と杉良太郎さんの歌で『すきま風』だった…

3曲続けて流れていた時に大泣きしていたので、施設長さんは『ギザ耳うさぎさん、ママがおらんなったけんどうやって生きて行けばいいのかわからんのよね…』と言いまして私を乳房(むね)に抱きしめて下さった…

アンデルセン童話の『マッチ売りの少女』の紙芝居だった日には、石原裕次郎さんの歌で『恋の街札幌』と鶴岡雅義とロマンチカの歌で『小樽のひとよ』が流れていたので大泣きをした…

その時に施設長さんは『マッチ売りの少女はホンマにかわいそうな女の子やったね…北国の街でどなな想いをして亡くなったと想うと切ないね…』と言いまして私をなぐさめて下さった…
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