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Seven
第6章 グランジ
社長の口から出た【一途】という言葉に驚きしかない。雪さんが遊び人ではなく、一途だなんて、にわかには信じがたい。
「確かにアイツは女好きで、よく様々な女性と食事に行くが、その先には発展しない。……その顔は、まだ信じていないな。俺も雪の行動には目を光らせていてね。アイツが会社に身を置く以上、問題があっては困ると身辺調査を極秘で行(おこな)ったんだ」
「身辺調査、ですか?」
「あぁ。アイツの不祥事が原因で会社に損失を出すわけにはいかないからな」
「それで、結果は?」
「白だったよ。……今もなのかは不明だが、ずっと一人の女性と付き合いがあるようだ」
真っ先に、ユータくんの義理のお姉さんである真緒さんが浮かんだ。雪さん自身も話していたが、別れた今でも雪さんは真緒さんを──
「俺の話は一年ほど前のことだ。月日が流れたように、雪の心にも変化があったかもしれない。……あんな奴だが、雪のことをよろしく頼む」
「……はい」
頼むと言われても……。「失礼します」モヤモヤした気持ちを引き連れ、社長室を出た。オフィスへ戻る足が重い。雪さんは真緒さんを想っている。それが事実。私がいくら雪さんを追いかけたところで振り向いてくれるはずもない。
──諦めよう、かな……
窓の外に流れる白い雲に投げ掛けた。答えなんて、どこにもないことは分かっている。自分の気持ちなんだから、自分で決めなくちゃいけないことも。
好きな気持ちを持ったままでいることも辛い。好きな気持ちを捨て去ることも辛い。どちらに転んでも辛いなら、私は……