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Seven
第7章 急加速
「ジュディさん!!」
勢いよく扉を開けると、「もう少し待っていただけませんか?」固定電話の受話器を持ったジュディさんと目が合った。どうやら電話中だったようだ。「ごめんなさい」と声には出さず、頭を下げると、ジュディさんは電話の相手に「ごめんなさい、ジムでトラブルがあったみたいで。こちらから、掛け直します」と伝え、受話器を置いた。
「どうしたの? そんなに急いで」
「大変です! 雪さんとユータくんが」
「え!?」
「とにかく来てください!!」
状況が掴めていないジュディさんと現場に戻ると、雪さんとユータくんはジムを利用していた男性たちに羽交い絞めにされながらも、相手を殴りかかろうとしていた。
「何してやがんだ、このガキ共がっ!!」ドスの効いた声が室内を占拠した。その声の主に自然と注目が集まる。皆の視線の先にいるのは、私の後ろに立っているジュディさん。
女性に寄せた声で穏やかに話す普段のジュディさんとは、まるで別人だ。がっしりとした低音ボイスで雪さんとユータくんに怒声を浴びせている。マシンガン並みに次から次へと言葉を乱射し、「ふぅ……」と小さく息を吐くとジム利用者たちにジュディさんは深く頭を下げた。
「身内が大変ご迷惑をお掛けいたしました。申し訳ございませんが、本日の営業は終了とさせていただきます。明日は通常通り営業いたしますので、またのご利用お待ちしております」
利用者たちは文句を言うこともせず、「ちょっとビックリはしたけど、ジュディさんが謝ることないよ」「また明日利用させてもらうね」とジュディさんに労いの言葉をかけながら、帰って行った。
「それじゃ、私も──」
「深雪ちゃんは、ダーメ。悪いけど、このお馬鹿さんたちに付き合ってちょうだい」
「でも……」
「それに、目撃者から話を聞く必要もある。当事者の二人はどうせ自分の主張しかしないだろうし」
「目撃者と言われても……全容は分からないんです。私が休憩からジムに戻った時にはすでに殴り合いの喧嘩に発展していて」
「そう……。でも、あなたにはいてほしい」
私に近づくとジュディさんは小声で告げた。
「雪くんのことを知るチャンスだから」