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Seven
第2章 ロマンチスト
黒服男性に再び案内して頂き、先ほどの部屋へ戻った。室内に変わったところは見られず、女社長はがっかりした表情をしていたが、陣川さんは変わらず「では、今日はこれで」とにこやかな笑顔を彼女に向けていた。
「柳さん。部下を案内してくださり、ありがとうございました」
「いえ。私は自分の仕事をしたまでですから」
「それでは、失礼します」
トイレに行っている間に商談を終えていたらしい。なんだかサボっていたみたいで後味が悪い。(実際、サボっていたことに変わりないけど……)
陣川さんと二人、女社長の会社を後にした。
「まさか二人きりにされるとは思わなかったよ」
「すみません……」
「俺が襲われてたら、どう責任取るつもりだったわけ?」
「え!? 襲われるって……」
「どう見ても襲う気満々だったでしょ、あの人。俺だって、誰でもいいわけじゃないんだからね」
「ごめんなさい……」
「……ぷっ、あははは!」急に笑いだした陣川さん。これは彼に騙されたパターンだ。
「本当、すぐ信じるんだから」
「騙すなんて酷いですよ!」
「あの人と二人きりにした仕返し。断るの大変だったんだからな!」
「……もう、冗談なのか本当なのか分からないですよ」
「そうやって、お前は悩んでろ」
「酷い!!」
「可愛い奴」そう聞こえた気がした。でも彼は何も言っていないような顔で煙草を吸っている。──気のせい、かな……。