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Seven
第2章 ロマンチスト

 陣川さんの場合、ロマンチストというよりも女性を落とすための発言としか聞こえない。

「──もっと近づけたらいいのにな」
「ん? 何か言いました?」
「いや、別に」

 また彼の携帯が鳴り始めた。でも、彼は出ない。「出ないんですか?」と声を掛けても「あー……気にしなくていいから」と疲れたような声で応えた。

「それよりさ、西宮さんは仕事終わったら何してるの?」
「友達とご飯行くこともありますし、買い物に行くこともありますよ」
「ふーん。ここら辺で食べてるの?」
「そうですね」
「じゃあ、今度美味い店教えてあげる」
「本当ですか? 楽しみにしてますね!」
「おう! 楽しみにしとけ!」

 親指を突き上げ、任せとけ!と言わんばかりの顔。いつの間にか鳴り止んだ携帯の着信音。

「陣川さんは仕事終わり何してるんですか?」
「俺にそれ聞いちゃう?」
「……あー、なるほど」
「ちょっと待って。今、良からぬことを想像したでしょ?」
「違うんですか?」
「俺、知らない子とはシないから」
「知ってる子ならするんですね」

 「仕事が終わったら、趣味に時間を使ってる」落ち着いた声で彼は続ける。

「笑うかもしれないけど、写真が趣味なんだ」
「写真……?」
「そっ。よく星とかの写真を撮ってる」
「意外……」
「だから言っただろ? ロマンチストなんだって」

 そういう意味だったのか……。星の写真を撮る陣川さんは想像がつかない。どんな顔でレンズを覗いているんだろう。ちょっと見てみたい気もする。
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