この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Seven
第2章 ロマンチスト
「だから、特定の人とは付き合えないんだよね」
「どうしてですか?」
「天気がいい日は、大体山に籠るから。会いたいって言われても会えないし、約束してても星を撮ることを優先するから」
「……そんなに星が好きなんですね」
「うん。男のロマンってやつ?」
そう言って笑う彼は男らしくて素敵だと思った。執着する人よりも開放的な人のほうがいい。いくら恋人とは言え、自分の時間は確率していたい。
「束縛する人より全然いいと思います!」
「お! 分かってくれる?」
「はい。恋人とは言っても、ずっと一緒だと疲れちゃいますし」
「そうなんだよ! 話がわかるね、西宮さん!」
差し出された彼の左手を右手で握手した。スポーツ選手同士の挨拶みたい。満足そうに陣川さんは頬を緩ませている。
「世の中には西宮さんみたいな子もいるんだね。やっぱ、年齢じゃないよなー。しっかりしてる若い子もいれば、話が通じない頭の固い年配者もいるし。──いいと思うよ。西宮さんのこと」
心臓が跳ねた。軽い音を立てて。こんな感覚は、久々。忘れかけていた、あの感じ──これって、まさか【恋】?
「ん? 俺に惚れた?」
「な、何言ってるんですか!」
「うちの会社、社内恋愛禁止じゃないから別に大丈夫だよ」
「……もう」
どうしよう……。もし、この弾む鼓動音が【恋】だとしたら──そう思ったら、急に陣川さんとの距離の近さが気になってきた。拳一個分しかない運転席と助手席との間。意識しないようにしなくちゃ!と思えば思うほど、考えてしまう。
好きになっちゃったのかな……。