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Seven
第3章 青春カムバック
その後、買い物袋を腕から下げた小林さんと合流した。気に入った服が買えたと嬉しそうに彼は話していた。
歩く度、雪さんの残り香が服から薫る。隣を歩いている小林さんに気づかれないかとヒヤヒヤする。疚(やま)しいことがあるわけではないが、噂の種になったら困る。
「なに、ビクビクしてんだよ。堂々としてろ」耳元に上から声が落とされた。誰のせいで!と思いつつ、「はい」と返した。
「二人で何してたんですか?」
「小林、お前を待ってたんだよ。つっても、俺らもお前が来る少し前に合流したんだけどさ」
「そうだったんですね。てっきり、下着選びに行ったのかと……」
「小林さん、下着の件は一旦忘れてください!」
「すみません」と笑う小林さん。彼も面白い人だ。今の会社は雰囲気がいい。社長(雪さんのお兄さん)が社内に新しい風を吹き入れているからかもしれない。見た目はお堅い方だけど、柔軟な思考の持ち主だ。
「さーて、帰るか!」
「雪さん、まだ帰るには早い時間じゃないですか?」
「悪いな、小林。──俺の夜は、これからだから」
「あー、なるほど! この後、予定があるんですね」
「そういうこと。悪いね、西宮さん」
「いいえ! 今日は楽しかったです! お誘い、ありがとうございました!」
久々に楽しい夜だった。何より嬉しかったのは──雪さんが名前で呼んでくれたこと。本当の恋人になれたら……。甘い現実の続きは、家に帰ってから布団に入って夢で見よう。