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Seven
第6章 グランジ
ジムに初めて通った日から、早いもので一ヶ月が経った。その間、一人で一回、雪さんと二人で一回行った。ユータくんとは時々連絡を取り合っている。家でも簡単に出来るエクササイズの仕方など、身になる情報を教わっている。
仕事でも進展があった。雪さんが新たに大手会社と契約を結ぶことに成功した。意欲的に邁進していく彼に引き離されないよう、ついていくのに必死の毎日。その頑張りが認められてか、私も営業として一人立ちのスタートを切った。
覚えることは山ほどあるけど、知らないことを知るのは苦じゃない。むしろ、ワクワクしている。それに、個人の顧客を持てたことが嬉しい。と言っても、雪さんのフォローがあってのこと。自分の力だけで契約を結べるようにならないと、完全なる一人立ちとは言い難い。
「最近、頑張ってるな」
「杉野さん! お疲れさまです」
営業から帰ってきた足で寄った自動販売機が並んでいる休憩所で杉野さんと鉢会わせた。
「どうだ? 雪と、うまくやってるか?」
「はい。いつも助けていただいてばかりです……」
「そうか。アイツも面倒見が良すぎるところがあるからなぁ……。──手は出されてないか?」
「え?」
「アイツ、昔は社員まで食い散らかしてたから。歳取って、少しは分をわきまえられるようになったのかもな。相変わらず、机の上は汚いままだけど……」
「あれでも片づけたんですよ……」
「なに!? あれで? ……西宮くんより先に一人立ちしないといけないのは、雪のほうかもしれないな」
「……確かに」
久しぶりに杉野さんとゆっくり話したかもしれない。杉野さんは専務ということもあり、常に忙しい方だ。私もここ最近は、雪さんの仕事が立て込んでいて、バタバタと外周りに出ていたため、ほとんどオフィスにいなかった。杉野さんと交わしたのは、社内の挨拶のみだった気がする。