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咲の旅物語
第18章 噂の屋台
「これは、ザンルーフ様。」
チックは方膝をつき頭を下げる。
「ああ、立ってくださいな。近頃有名な野菜売りがあると聞いて、街に降りたのですが、早速出逢えて幸運ですわ。」
ザンルーフはチックを立たせながら、色とりどりの野菜に目を輝かせた。
「有難うございます。こちらは街道の孤児院で栽培され、今朝取れたばかりの野菜でございます。」
チックは立ち上がり、頭を下げた。
ザンルーフの供の騎士や、マンマードがチックを睨む。
ザンルーフの手前、口を閉ざしているがチックは平民。ザンルーフは王族である。
国のトップクラスと最下層の人間が同じ目線で話すのは、貴族達からすると許せるものではない。
「………貴様」
例に漏れず、マンマードは口の中で毒づいた。
「わたくし、野菜が大好きなんですの。これ、頂けるかしら?」
そんな家臣の様子など、全く気にせずザンルーフはニコニコと腕一杯の野菜をチックに差し出した。
「有難うございます。」
チックも家臣達を気にせず、普通に対峙していた。