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当機は偶然により、運命を変更致しました
第1章 到着地の状況は最悪
私達は、その後また駅の反対のバスセンターまで行って、バスに乗った。
飛行機と同じように窓側が私で、隣がお隣さん。
三列シートだから、飛行機よりゆとりがある。
飛行機と同じように、私は乗ったらすぐ眠った。
でも、飛行機の時と違って、私は決めてる事が有った。
今度はちゃんと、お別れの前にお礼を言うんだ。
飛行機の時は、見失ってお礼を言えなかったから。
空港はみんな行き先が同じだから偶然再会できたけど、バスはそうじゃない。
降りるバス停だって違う。
決めていたせいか、バスが川を渡って街に入る頃には、きちんと目が覚めた。
あと何停かで終点で、お隣さんは終点よりも手前で降りる。
「じゃあ、俺は次で降りるね」
「本当に、色々お世話になって……ありがとうございました」
良かった。ちゃんと言えた。
ほっとしてたらお隣さんは、目が無くなる位にっこり笑った。
「どういたしまして。こちらこそ、楽しかったよ」
バスが停留所に止まり、お隣さんは隣の席から立ち上がった。
「じゃあね!お誕生日おめでとう、良い旅を!」
「あ」
私は小さな心残りを抱えながら、バスから降りたお隣さんに手を降った。
*
その後、バスは終点に着いて、私は彼の家に辿り着いた。
合い鍵で扉を開けて、そっと玄関に入りかけて。
見たくない物を、見てしまった。
玄関には、靴が脱ぎ散らかされていた。
ちゃんと靴を揃えたりしない人だから、その位では驚かない。いつもの事だ。
でも。
一つだけ、いつもと違う事が有った。
いつもの様に転がっている彼の靴と絡み合う様に、華奢なヒールの可愛い靴が、転がっていた。