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わがままな氷上の貴公子
第3章  心配


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 宣言通り、潤は一昨日も昨日も見舞いに来ている。
 オレは普通に個人練習に出ていたが、五階以上へは本当の関係者しか入れない。だから休憩時間に潤が来ることはないまま。
 一昨日の夜に見舞いに持って来たのは、DVD。
 先輩に、男への見舞いはこれだと言われて持って来たらしいが、“女教師の淫らな課外授業”だぞ!?
 潤もタイトルを見て紅くなっていたから知らなかったんだろうが、投げつけてやった。
 そんなモノ、ウチに持ち込むなっ!
 昨日は、ケーキを持って来やがった。
 甘い物は嫌いだと投げつけようと思ったが、和子さんの分もあったから、リビングでお茶だけ付き合ってやるとニコニコしてオレの分まで潤がたいらげた。
 オレのことを何も分かっていないクセに、どうして付きまとうか不思議で仕方ない。最近千絵も六階で個人練習を始め、塔子も来ていないから退屈なんだろう。
 だったら、スケートの自主練習でもしてろよっ!
 潤が来ると退屈しないのは認めてやるけど、オレに怒鳴られてもニコニコしてるのを見ると気が抜ける……。


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 幼稚舎から殆ど顔ぶれの変わらない学校と、同じように代わり映えしないクラブのメンバー。
 そんな中にはいないタイプだ。
 だから潤が、最初は奇妙にも思えた。でも今は、未知の生物と会ったような好奇心があるのも事実。
 本能のままに生きてる、動物みたいなもんだな……。
 いつものように早退した学校から戻ると、潤がリビングで丼と格闘してた……。
 今、14時だぞ?
 昼食でも、夕食でもないよな……?
「悠ちゃん。お帰り。制服着てても、やっぱり綺麗だねえ……」
 丼を持ったまま、ボーっと見るなっ!
「何してんだ……?」
「お見舞いに来たら、和子さんに留守番頼まれた。お礼におやつって、カツ丼作ってもらったんだあ」
 お前は、おやつにカツ丼を食べるのか?
 それも、空の丼がテーブルにあるけど? 二杯目かっ!
 和子さんも、潤を餌付けしてどうするつもりなんだよ。
「和子さん、夕食の準備までには戻るって。オクサマの用事とかで……」


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