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わがままな氷上の貴公子
第4章 潤

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個人練習へ行き、昨日のことを謝ってから練習を始める。
プログラムは全て出来上がっているが、一応ステップの細かい打ち合わせから始めた。
今の焦点は、グランプリファイナルの表彰台。
前季のプログラムとは、音楽に合わせて内容を変えた。
ファイナルの表彰台。
幼い頃から、まずはそこを夢見て頑張ってきた。
オリンピックに挑戦出来る年齢に達したからには、恥ずかしい結果を残したくない。
一時的に脚光を浴びただけで消えるなら、フィギュア自体辞めてもいいと思っている。
ここにいれば、潤も来られない。誰にも邪魔されることなく練習が出来る。
プログラムの内容は、やはり後半の大技を控えた物。他の選手に比べて持久力がないオレは、これを完璧に滑り切るしかない。
全てのエレメンツで加点を取れば、表彰台に届くはず。
コーチとの話し合いの後、リンクへ降りた。
中央でポーズのまま静止していると、愛の夢が流れ始める。
ステップを踏みながら勢いをつけ、最初の4回転サルコウ。綺麗に着地して、動きを入れながら次の4回転フリップと3トウループのコンビネーションへ。
少し着氷のバランスを崩したが、練習は始まったばかり。
次は3アクセル。まだ粗削りだが、この時期にしては充分な滑りを続けた。
個人練習を早めに終え、合同練習へ顔を出すようにとコーチに言われる。
大事な時期に入ったのに、合同練習は正直邪魔。
一応リンクを二周してから、すぐベンチへ座った。
「望月、足は大丈夫か?」
赤坂に声をかけられ、無言で頷く。
足なんて、完全に治っている。
軽い捻挫なのに、千絵から聞いたらしい。オレは一言も言っていないのに。
これでまた、赤坂はオレと千絵が付き合っていると余計に信じるだろう。練習が休みの日に一緒に外出するなんて、デートだと思われてもしょうがない。
スケート場でのことを考えていたら、潤の顔が浮かんだ。
全部、あいつのせいだ……。
あの時間に、あいつがシャワールームへ来なければ。あいつが後五分遅ければ、出口ですれ違っただけかもしれないのに。
イライラする。

