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わがままな氷上の貴公子
第4章 潤

もし出来たとしても、オレと気の合う相手を探すのが大変。失敗して、最後に喧嘩しているペアもいるほどだ。
でも、このクラブでペアの指導はしてないぞ?
「発表会が終わったら、クラブを移るんです。主任コーチの、紹介で」
そうだろうな。ここにいてもシングル以外の練習は出来ない。遊びでやるなら2階の貸し出し用リンクでいいが、そんなヤツはいないだろう。
「だから。最後だから、発表会でトリなんです」
呆気に取られたまま、圭太の話を聞いていた。
オレが突っ込まないなんて、珍しいぞ?
「口止め、されてるんです……。当日、滑る直前に発表するからって。主任コーチは、隠しイベント、なんて言って、一人で楽しんでるみたいで……」
そういうことだったのか。
主任コーチと圭太だけの秘密なら、赤坂が知らなくて当然。それでオレにかける言葉がなかったんだろう。赤坂は熱血だから、オレの気持ちを別へ向けようとするだけで。
当日に、理由を知ったみんなの顔が楽しみだ。
笑いを堪えたオレに、圭太が安心した笑顔を見せる。
「せっかくシニアに上がったのに、望月さんと、練習で会えなくなるのは残念ですけど。大会で会えるように頑張ります!」
圭太が大きく頭を下げた時、入口を入ってくる潤の姿が見えた。
オレを見つけると、嬉しそうにこっちへ来る。
階段の蔭でも、お前の身長なら上から見えるよな……。
「悠ちゃん!」
傍まで来た潤にも頭を下げてから、圭太がオレを見た。
「じゃあ、失礼します……」
「じゃあな」
言ってやると、圭太は頭を下げてから階段を下りて行く。潤はその後ろ姿に、ニコニコと手を振っている。
お前は鶏頭かっ!
三歩歩いたら忘れる鶏みたいに、数時間経つと「来るな」って言ったのを忘れたのか!?
「……何しに来たんだよっ」
「悠ちゃんに会いに来たに、決まってるじゃん。入った所で会えるなんて、縁があるよねえ」
その縁を、ブチ切ってやりたい。
「もうすぐ、フィギュアの発表会なんだよね。観に行くから。あっ……」
着信音が聞こえて、潤がポケットからスマホを出した。

