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わがままな氷上の貴公子
第8章  本当の闘い


 食欲がないなんて、たまにだったのに……。
 潤がいるだけで、食卓が明るいと思った。
 時々潤が「美味い」と言うが、食べ終えるまで会話は殆どない。
 それでも、何かが違う。
「オレ、二週間後にロシア行くからな」
「え? 旅行?」
 やっぱり馬鹿だ、こいつ……。
「大会だよ! シリーズ最後の大会!」
 潤は、「試合かあ」なんて呟いてる……。
 鶏頭……。
「お土産買ってきてね。あっ。ロシアならアレがいいなあ。人形がいっぱい出てくるやつ」
 マトリョーシカのことか?
 こいつ、まだ旅行気分でいやがる。
 でもそれは、オレを特別な目で見ていないからかもしれない。
 ただ、スケートをやっている高校生。
 その方が気楽でいいが。
「時間があったらな……」
 和子さんも、笑いを堪えている。
 潤のお蔭なのか、オレは出された殆どを食べ切って食事を終えた。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「望月君。お互いに、ファイナルも頑張ろうね」
 表彰式の後、本堂は満面の笑み。
「はい。よろしくお願いします」
 コーチの鈴鹿の予想は外れ。
 ロシア大会で、日本一と言われる本堂と当たってしまった。オレも、人気のある本堂なら日本を選ぶと思ってたのに……。
 ショートの滑走順を決める抽選会で会った時は、驚きを隠すしかなかった。
 その動揺からか、オレは日本人三位。
 フリーで、転倒というミスをしてしまったせい。
 ただでさえ後半に大技がないオレにとって、大きな減点材料。九十九にさえ、ポイントで負けてしまう始末。
 やはり、本堂の演技は完璧だった。細かいミスはあっても、それを別の所でカバーして加点を取る。
 グランプリファイナルへの出場は決まったが、突然現れた九十九が、オリンピックへの道を阻むかもしれない。
 空港での出迎えは、前回と同じく盛大だった。
 でも、主役は金メダルの本堂。次は九十九。そしてオレは最後。
 この後暫くは、テレビ出演も三人一緒になるだろう。
 ファンにサインをする手も重い。それでも、笑顔で対応した。
 いくつかのテレビ出演が終わり、やっと家に帰る。
「ただいま……」
 迎えてくれたのは、潤と和子さんの笑顔。
「悠ちゃん、おめでとう。ファイナルに出られるんだってね。テレビで言ってたあ」
「お疲れ様でした」


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