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わがままな氷上の貴公子
第8章  本当の闘い


 取り敢えずリビングのソファーへ座り、キャリーバッグの中から包みを出す。
「ほら」
「え? あー。お土産だあ!」
 あまり時間はなかったが、リクエストのマトリョーシカを買ってきてやった。
 潤はすぐに包みを開け、次々と人形を出して喜んでいる。
 子供かっ!
 和子さんへはネックレス。
「あら。ありがとうございます」
 いつも遠征で土産は買わないが、気晴らしに街を歩いてみたついで。
 和子さんの方が、メインだからなっ!
「すぐ夕食にしますね」
 頷いたが、疲れと落ち込みからあまり食欲はない。でも、潤がいなかった時とは違う感覚だ。
 結果はどうであれ、ファイナルへの進出は決まった。
 前を向くしかない。
 ミスを引きずったって、いいことはないから。
 食欲はないと思ったが、潤の食べっぷりを見ていると、思ったより食が進んだ。
 最初は鬱陶しいとまで思ったのに……。
 食後に移ったリビングで出してくれたのは、オレの好きな紅茶のダージリン。
 言葉じゃないエールだと受け取った。
 和子さんなら分かっているはず。
 ファイナル進出は誇らしいことだが、ミスのせいで三位だったオレの気持ちも。
 ミスなく滑って三位なら、自分がそこまでだと諦めるしかない。だから余計に悔やんでしまう。
 次こそ、完璧な演技をしてやる。出来れば、基礎点が1.1倍になる最後三回のジャンプを大技にしたい。
 それはオレにとって賭けになるが、オリンピックを目指すには必要だろう。
「じゃあ、私は失礼しますね。潤くん。ごゆっくり」
 和子さんが帰るのは構わない。いつものことだ。
 でも、潤にごゆっくりって……。
「和子さん、おやすみなさーい」
 潤が嬉しそうなのが気になる。
 玄関ドアの音が聞こえると、潤は隣に座ってきやがった。
 いつも、そんな音はここまで聞こえないのに。和子さんが、わざと聞こえるように閉めたとしか思えない。
 バレてる……。
 絶対バレてる……。
「今日は、外出届け出してきたんだあ」
 お前の寮は、自由だなっ!
「ここを親戚の家って書いたから。和子さんが、そうしなさいって」
 羽交い絞めにされて、溜息をついた。


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