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〜 夏の華 ショートストーリー集〜
第11章 海賊と昼食を
「…あぁ…っ…つきし…ろ…」
男の熱く激しい口付けに窒息しそうで、暁は切なげに喘ぐことしかできない。

南仏の海はいつも波が穏やかだ。
沖に停泊させた船は、静かな紺碧の波に微かに揺れているだけだ。
…甲板の上…暁は月城に組み敷かれ、甘い吐息を漏らしている。
二人とも、生まれたままの姿だ。
太陽の下、本能と欲望の赴くまま、互いを需め合い愛し合う。

…こんなことが以前あったと、愛おしい男の胸に抱かれながら、暁はぼんやりと想い出す。

…あれは…軽井沢の小さな池の上…。
満月の晩に、ボートの上で激しく我を忘れて愛し合った…。
池に落ち、死んでしまっても構わないと、濃厚な愛の交歓に酔いしれながら思っていたのだ。

…今も…男への愛は全く変わってはいない。
むしろあの頃より、深く濃くなっている。
貪欲に需め、己れのすべてを惜しみなく与える。
我を忘れ、ただひたすらにこの美しい男を愛し尽くす。
…触れていない場所など、1ミリもないほどに…。

「…あぁ…っ…!…ふか…い…!」
雄々しい海賊の剣のような月城の牡が、暁の淫らな肉を切り裂くように分け入り犯してゆく…。
その瞬間だけは、未だに慣れることがない。
小さく悲鳴を上げ、男に縋り付く。

けれど、それも一瞬だ。
すぐに暁の淫肉は歓喜の声を上げ、月城の牡に絡みつき嬉しげに締め付けてしまうのだ。

しかも、今日は海の上…船が愛の褥となる。
…逞しく美しく優雅なる野蛮さを兼ね備えた海賊に、思う様犯される倒錯めいた妄想を、暁は抱くのだ…。
それは暁を更に乱れさせた。

「…ああ…っ…い…い…っ…。
…しん…の…あたって…きもち…いい…」
赤裸々に淫らな言葉を口にする暁を、月城は愛おしげに見つめる。
「…もっと、気持ちよくして差し上げますよ…。
貴方がよがり狂うまで…」
色悪めいた言葉を、薄桃色に染まった耳朶に吹き込む。

「…ああ…し…ん…っ…あいして…る…」
「…暁…!
愛しているよ…」
男は激しい腰遣いを間断なく続けながら、暁の花のような口唇を散らすように奪い続ける。

…船は愛欲の海に漂う二人を、さながら揺籃のように優しく揺らしているのだ…。

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